- 2026年10月13日
【ジャスミンのフライングカーペット徹底解説】16枚のじゅうたんと王家の庭園に隠されたバックグラウンドストーリー
東京ディズニーシーの「ジャスミンのフライングカーペット」、皆……
東京ディズニーシーのアラビアンコーストにある「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」。チャンドゥがかわいくて、「コンパス・オブ・ユア・ハート」が耳から離れない、あの癒やしの船旅です。
でも、開園当初からシーに通っている方なら、きっと覚えていますよね。財宝が眠る洞窟の奥で、乗組員を捕らえていたあの“鬼”のことを。
今では牢屋に閉じ込められ、シンドバッドに助けられて一緒に歌っているあの巨人。実は2001年の旧版「シンドバッド・セブンヴォヤッジ」では、まったく逆の立場の存在だったんです。
今回は、旧版の“鬼”をこよなく愛する私が、セブンヴォヤッジの物語と、2007年のリニューアルで何が変わり、何が残ったのかを、ヲタク目線で全力で語らせてください…!
まずは現在のアトラクションについて、簡単におさらいしておきます。旧版の話をする前に「今」を押さえておくと、このあとの比較がぐっと味わい深くなりますよ。
シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジは、アラビアンコーストにある約10分間のボートライドです。1隻の定員は24名。私たちゲストはシンドバッドの船団の船員として、相棒の子トラのチャンドゥとともに「最高の宝物」を探す航海へ出発します。
嵐や盗賊といった困難に出会いながらも、“心のコンパス”を信じて進んでいく——というのが、公式が示している現在の物語です。
ちなみにチャンドゥは、原典『アラビアンナイト』のキャラクターでも映画のキャラクターでもなく、このアトラクションのためのTDSオリジナルキャラクター。ここでしか会えない子なんですよね(尊い)。
さて、ここからが本題です。今のシンドバッドは、実は“二代目”。東京ディズニーシーが開園した2001年9月4日、この場所で航海を始めていたのは「シンドバッド・セブンヴォヤッジ(Sindbad’s Seven Voyages)」でした。
ディズニー公式ファンクラブD23の解説によると、セブンヴォヤッジは『アラビアンナイト』の幻想的な世界を巡り、未知の危険と想像を絶する富に出会うボートライドとして紹介されています。
開園当初のシーは「大人のディズニー」を強く打ち出していたパーク。旧版もその方向性に沿って、劇的で重厚な冒険譚として設計されていました。照明は暗めで、音楽はドラマチック。あの独特の緊張感、たまらなかったですよね…!
旧版のシンドバッドは、今の爽やかな青年とはまったく違う背景を持っていました。当時のガイドブックを再録した資料によれば、彼は大富豪の商人の息子。父の死後に莫大な遺産を相続したものの、贅沢な暮らしでほとんどを使い果たしてしまいます。
そこで残った家財を売って元手をつくり、船を手に入れ、商人として再起するために航海へ出る——。つまり旧版は「失った富を取り戻す」ための旅だったんです。髭をたくわえた成熟した冒険家という姿にも、この背景がにじんでいました。
この前日譚を語っていたのが、Qライン(待ち列)です。入口から乗り場までに飾られたタペストリーと絵画が、シンドバッドの生い立ちから出航までを順に描いていました。当時のファンの記録では「1枚のタペストリーと6枚の絵画」だったとされています。
並んでいる時間そのものが、物語のプロローグになっていたわけです。
では、旧版の航海を順番にたどっていきましょう。当時のガイドブックを引用した記録をもとに再構成しています。今の航海を知っている方は、「あのシーン、昔はこうだったのか!」と重ねながら読んでみてください。
バズラの市場を出ると、まず天文学者が航海の危険を予告します。旅の始まりから不穏な空気…!
嵐の海では、妖しい「ウツボ女」が船を岩礁へと誘い込み、あたりには難破船の姿が。今では人魚たちがシンドバッドを救ってくれる岩場ですが、旧版では船乗りを破滅へ誘う場所だったんですね。
ルク島では、空腹の乗組員たちが巨大な卵を見つけ、食料にしようとします。ところがそれは怪鳥ルクの卵。怒った親鳥に、仲間が捕らえられてしまいます。
今は「盗賊から守ってあげる」卵が、旧版では人間側が手を出してしまう卵だった。この対比だけでも、物語の価値観の違いが見えてきます。
そして、いよいよ筆者いちばんの推しシーンです。
洞窟で財宝を見つけ、喜ぶ乗組員たち。しかしそこは巨大な鬼の住処でした。鬼は財宝を守り、乗組員を捕らえてしまいます。シンドバッドは仲間を救うため、この鬼と対決することに——。
(ここにご自身の記憶:鬼の表情・大きさ・動き・声、初めて見たときの怖さや衝撃、なぜ好きだったのか など。この記事の一番熱いパートなので、思い切り語ってください!)
原典『シンドバッドの冒険』でも、第三の航海に登場する人を襲う巨人は「人食い鬼」と訳されることが多い存在です。旧版の鬼は、まさに物語の“恐怖”を一身に背負ったキャラクターだったといえます。
鬼のもとで得た財宝は王に売られ、航海は続きます。猿人の島では、猿人たちが岩や槍で船団を威嚇。さらに船員たちが「島」だと思って休んでいた場所が、実は巨大なクジラの背中だったという危機にも見舞われます。
数々の危険を乗り越えたシンドバッドは、莫大な富とともにバズラへ帰還。当時の資料は、彼が得たものを財宝だけでなく「勇気」や「強い意志」とも説明しています。まさに王道の冒険譚です。
旧版の迫力を支えていたのは、とんでもない規模の作り込みでした。旧版のショーデザイナーで、アラビアンコーストのリード・アートディレクターだったラリー・ニコライ氏のインタビューから、その裏側を見ていきます。
ニコライ氏の回想によれば、旧版には160体以上のアニマトロニクスが使われ、設計から製作・設置までに約6年を要したそうです。当時のガイドブック系資料には「163体」という記録も残っています。
人間型のフィギュアは約1メートル級。そこにルク、鬼、クジラといった巨大な存在が加わるのですから、壮大な人形劇といっていいスケールです。あの鬼の圧倒的な存在感も、この規模感の中にあったからこそなんですよね。
音楽を手がけたのは、ディズニー・レジェンドのバディ・ベイカー氏。ニコライ氏によると、往年の映画音楽の巨匠バーナード・ハーマンを思わせるような、危険とドラマを感じさせるスコアを狙ったそうです。
洞窟の暗闇に重厚な音楽が響き、その奥に鬼がいる。あの空気感は、音楽なしには成立しなかったと思います。
ネットでは「怖すぎて不人気だったから明るくなった」とよく言われますが、実情はもう少し複雑です。
ニコライ氏は、物語がゲストに十分伝わっていなかったこと、トーンが暗く重いという評価があったことなどを挙げています。一方で、ボートライドは処理能力が高く、パークの奥という立地もあって、そもそも列が長くなりにくかったとも語っています。
「待ち時間が短い=不人気だった」と単純には言えない。複数の要因が重なって、大幅なストーリー改訂へ進んだと考えるのがよさそうです。
2007年、セブンヴォヤッジはストーリーを改訂し、「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」として生まれ変わります(当時の刊行資料を出典とする記録では、旧版の運営終了は2006年9月29日、新版オープンは2007年3月29日)。
ここで面白いのは、セットや怪物を捨てたのではなく、その“意味”を書き換えたことなんです。
新しいシンドバッドは、若々しい青年の姿に。そして相棒として子トラのチャンドゥが加わりました。旅の目的も「失った富を取り戻す」から「最高の宝物を探す」へ。主人公が変わったことで、世界の見え方そのものが変わっていきます。
旧版ファンとして、いちばん胸が熱くなるのがこのシーンです。
かつて乗組員を捕らえ、シンドバッドと対決していた鬼。現行版では公式に**「心優しい巨人」**と紹介され、牢屋に閉じ込められている側になっています。シンドバッドは、ルクからもらった羽を使ってこの巨人を救い出すんです。
救出された巨人は財宝の中で楽器を奏で、低い声でシンドバッドと一緒に歌います。
捕らえる側から、捕らわれる側へ。対決する相手から、救い出す友人へ。
同じ洞窟、同じ巨人なのに、物語上の役割はほぼ180度反転しています。旧版の鬼を知っていると、あの巨人の歌声がなんだか泣けてくるんですよね…(わかる人にはわかる)。
(ここにご自身の気持ち:今の巨人を見たときに感じること など)
反転したのは鬼だけではありません。
| 存在 | 旧版(セブンヴォヤッジ) | 現行版(ストーリーブック・ヴォヤッジ) |
|---|---|---|
| 岩場 | ウツボ女が船を岩礁へ誘う | 人魚がシンドバッドを救う |
| ルク | 卵を巡って人間と衝突 | 盗賊から守ってあげる存在 |
| 巨人 | 乗組員を捕らえる“鬼” | 囚われた心優しい巨人 |
| サル | 岩や槍で威嚇する猿人 | 音楽で友達になる相手 |
| クジラ | 島と間違える未知の危険 | 背中に乗せて故郷へ送ってくれる友達 |
旧版デザイナーのニコライ氏は、現在も元の設計の80〜85%ほどが残っているという見立てを語っています(公式の数値ではなく本人の回想です)。つまり、私たちは今もあの旧版の舞台の上を航海しているんです。
現行版のもう一つの魅力は、前の場面の出来事が次の場面につながっていること。公式ブログも「ある場所で手に入れた宝物が、ほかの場所で役立つ」と解説しています。
ルクを助けて羽をもらう → 羽で巨人を救う → サルタンから楽器をもらう → 楽器でサルと友達になる → サルからバナナをもらう → クジラに乗って故郷へ。
旧版の「危険を克服して富を得る」構造が、「誰かを助け、助けられ、そのつながりが次の出会いを生む」構造に組み替えられているんです。
旧版の重厚なスコアに代わって航海を彩るのが、アラン・メンケン作曲の「コンパス・オブ・ユア・ハート」。作詞のグレン・スレイターとともに、このアトラクションのために書き下ろされた一曲です。
メンケン本人はD23のインタビューで、ボートライドの音楽には特有の難しさがあると語っています。ボートが部屋の境目を通るとき、隣り合う部屋の音楽が同時に聞こえてしまうため、映画のように自由に転調できないのだそう。
約10分間、同じ旋律が編曲や歌い手を変えながら流れ続けるのは、単なる使い回しではなく、ライドという空間に合わせた音楽設計だったんですね。
航海が進むにつれて、巨人やサルタンなど、出会ったキャラクターたちが次々と歌に加わっていきます。友達が増えるほど、歌声も増えていく。
旧版で恐怖の象徴だった鬼が、今はこのコーラスの一員になっている。ここは公式設定ではなく筆者の読み解きですが、音楽そのものが「つながる冒険」を表現しているように感じます。
旧版を知っている方も、知らない方も、次に乗るときはぜひこんな視点で航海してみてください。
旧版「シンドバッド・セブンヴォヤッジ」は、未知の危険を乗り越え、富を持ち帰る冒険でした。そして現行の「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」は、出会った相手に手を差し伸べ、そのつながりの中で「最高の宝物」を見つける冒険です。
世界から危険が消えたわけではありません。変わったのは、シンドバッドと世界との関係でした。
だからこそ、旧版の鬼の怖さを知っている人ほど、今の巨人が歌う姿に特別な気持ちを抱けるのだと思います。あの鬼が好きだった私にとって、今の航海は旧版の“続き”のようにも感じられるんです。
次にアラビアンコーストを訪れたら、ぜひ洞窟の巨人に「昔は怖かったよね」と心の中で話しかけてみてください。きっと、いつもの航海が少し違って見えるはずです。
はじめまして、Tsuppuy(ツッピー)です!茨城在住のアラサー、普段は技術派遣エンジニアとして働いています。大好きなディズニーを中心に、映画やアニメ、ゲームの「知ってるともっと楽しくなる」解説やバックグラウンドストーリーを発信中。好きなことを好きなだけ語りたくてブログを始めました。同じ沼にいる人も、これから沼る人も、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです!